内容
超絶的なテクニック、知的な音楽性で活躍中のヴァイオリニストの
演奏を存分にお楽しみください。
【予定曲目】
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調 作品96
J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調 BWV1006
H.W.エルンスト/「夏の名残のバラ」による変奏曲
ヤナーチェク/ヴァイオリン・ソナタ
~渡辺玲子さんからのメッセージ~
オープニングに演奏するベートーヴェンの10番のソナタは、ヴァイオリン・ソナタの1番から9番「クロイツェル」までの作品群とは10年以上の隔たりがあり、作品の持つ音楽的な方向性も内面的な成熟が増して、不思議な静謐感を湛えた深さと広がりが大変に心に響く作品です。説得力をもって演奏するのはなかなか難しい作品ですが、その一見素朴ながらも洗練された透明感は今の時代にとても共感をもたれる響きを持っていると感じます。
プログラムの締めくくりはヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタを考えています。
これも各楽章は短いながらも、独創性に富み聴衆に「だまし絵」的効果を及ぼす形式をそこかしこに用いていますし、その歌心は私達の心にすっと入ってくる柔らかさと、打って変わって切り込むような激しい情熱をも湛えています。最近話題の村上春樹の「1Q84]でも、冒頭にヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が出てきて話題になりましたが、小説の全編を通してまるで「ソナタ形式」における主題のように何度も繰り返して現れ、この音楽が主人公の心の謎を解き明かす一つの「キー」となっています。私自身は村上氏の音楽描写に同感できないところも多いのですが、ヤナーチェクの作品が選ばれたのは、その音楽的響きが、今を生きる私達に何か原始的で根源的な共感を呼び覚ますからでしょう。
ベートーヴェンとヤナーチェクの間には、無伴奏の作品を幾つか入れるつもりでいます。ヒンデミット、イザイ、エルンスト、バッハの中から今良い組み合わせを考えているところです。ヒンデミットもイザイもバッハの影響を受けていますが、偉大なバッハの音楽は時代を超えて私達の心に深く繋がっています。バッハは、私達の心に「根源的な何か」について問いかけ、それに対する深い共感を呼び覚ましてくれるのです。
今の私にとって大切なことは、この「根源的な何か」を感じさせてくれる音楽に対して、自分なりに向き合うことです。それが音楽を演奏する喜びであり、それが聞いている方々にも共感していただける形で伝われば、これに勝る喜びはありません。