ピアニスト田部京子が語る
「シューマンとメンデルスゾーン」
シューマンを軸に、ロマン派の音楽世界をたずねる好評シリーズ「シューマン・プラス」。第4章となる7月8日(水)の公演は、生まれた年が1年しか違わず、親交があったシューマンとメンデルスゾーンを取り上げます。ピアニスト田部京子さんにシューマンとメンデルスゾーンの魅力を語ってもらいました。
「同じロマン派でも2人の音楽は対照的ですが、互いに尊敬していました。それぞれ自分の中には存在しないものへの憧れを感じていたのではないかという気がします。
メンデルスゾーンはバッハ再興の原動力になるなど、古典的な音楽への執着と敬意が根底にあって、その形式の枠組みの中でのロマンティシズムを最大限に追求したように感じます。彼の人生の中で起こる苦難も葛藤も、その心の中で和解させて音楽に向かっているような印象です。短調のパッセージであっても、どこかに幸福感があり救いを感じます。初めて聴く人でも親しみを覚える美しいメロディーには、全体を通して”優しいうた”が感じられます。端正な音楽の中に秘められた豊かなロマン性を、7月8日には感じて頂ければと思っています。
これに対してシューマンは、彼の中に存在する様々な情感を自己の中で消化しきれないままに音楽へと表出しているような印象です。断片的な曲想が連なって一つの幻想的な世界が出来る。一見捉えどころがない、その独特のファンタジーがシューマンの面白さなんです。今回演奏するフモレスケは、想像があちこちに飛翔して夢と幻想の世界をさまよい、詩的な印象も受けます。まさにシューマンならではの魅力がぎっしりと詰まった曲なので、そのファンタジーの世界を楽しんでいただければと思います」
田部京子シューマン・プラス第4章