浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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©GuillermoMonteleoneネストル・マルコーニタンゴはもちろん、世界中の、歴代のバンドネオン奏者として指折りの名手である。ネストル・マルコーニは、1942年、アルゼンチンのサンタ・フェ州アルバレスに生まれた。同年、サンタ・フェ州のおとなりブエノス・アイレスではダニエル・バレンボイムが生まれている。16歳で、サンタ・フェ州都ロサリオでプロとしてデビュー、まもなくブエノス・アイレスに移り、70年にエンリーケ・フランチーニのセステート(六重奏)のメンバーとなった。73年にはフランチーニ=ポンティエール楽団の一員として来日、若きマルコーニのプレイは日本でも注目されることとなった。さらにオマール・バレンテと共にバングアトリオを結成し、大胆なメロディのアレンジとモダンなハーモニーの採用でタンゴに新風を吹き込んだ。バンドネオン奏者/アレンジャーとして、タンゴ名曲をすばやいパッセージでなんなくこなす鮮やかな指遣いと、フレーズの合間々々に折り込ませる洒落たフェイク、アストル・ピアソラを彷彿させる繊細な色彩感に、マルコーニというアーティストの個性が輝く。このセンスは今も変わらず新鮮だ。そしてマルコーニは優れたメロディ・メイカーでもある。自作曲では「TiempoCumplido時が満ちて」「ModaTangoタンゴ・モード」「L’Atelierアトリエ」ClubdelVinoワイン・クラブ」など感傷的なメロディの佳曲を発表している。8三浦一馬朴葵姫マルコーニの活動の幅は広く、80年代以降は数々のタンゴ・オーケストラでの演奏や音楽監督として活動する一方、海外での活動も多くなった。ピアソラ没後5年となる97年に世界中で巻き起こったピアソラ曲ブームによって、クラシック界のミュージシャンがピアソラ作品やタンゴ名曲をアレンジして演奏するクリエイティヴなロール・モデルが確立されたのだ。タンゴとクラシックは弦楽器を多用するところや芸術的センスに共通点が多い反面、タンゴ「らしさ」を醸し出すビート感やフレイジングは独特であるし、そもそもバンドネオンという楽器は本来はパイプオルガンの代用として教会の野外儀式で使われていた特殊な楽器。弾きこなすプレイヤーも世界的には希少であり、マルコーニの活動の場は世界にも、クラシック界にも大きく広がった。タンゴとクラシックを結ぶ架け橋としてマルコーニの存在感はいまなお大きい。今回、マルコーニの愛弟子と呼べる存在のバンドネオン奏者:三浦一馬とのデュオ、初共演となるギター奏者:朴葵姫とのデュオの2公演が予定されている。ホールの隅々まで染み渡るであろう美しい響きが楽しみである。山本幸洋(音楽ライター)8/24(木)19:00ネストル・マルコーニ&三浦一馬~バンドネオン・ヒーローズ~8/25(金)19:00ネストル・マルコーニ&朴葵姫(ギタ-)~スーパー・ソロイスツ~各¥6,0002公演セット券¥10,0003/28(火)発売


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