>> P.2
©kunihisakobayashi.浜離宮ランチタイムコンサート20周年記念江口玲が贈る、第1回公演の完全再現コンサート◆ホロヴィッツゆかりのスタインウェイとの出会い浜離宮朝日ホールの人気シリーズ「浜離宮ランチタイムコンサート」がスタートしたのは、今から20年前の2004年1月21日のこと。以来、平日昼の11時30分開演、90分間というスタイルで、230回を超える公演を重ねてきた。そして、2024年1月17日には20周年記念として、第1回に出演したピアニストの江口玲による完全再現コンサートが開催される。スタート当時を振り返っていただきながら、江口に話を聞いた。「今でこそ昼間のコンサートも増えましたが、20年前はほとんどなかったように思います。夜のコンサートには来られない方もいらっしゃるということで、浜離宮朝日ホールのスタッフが熱心に企画されて、栄えある第1回目にオファーをいただきました。当時は、銀座や新橋のレストランのランチとセットになったチケットも販売されて、コンサートが終わったあと、お食事に行かれるお客さまも多くいらしたようですね」このとき演奏したピアノが、ローズウッドのボディを持つ1887年製のニューヨーク・スタインウェイ(タカギクラヴィ2ア所有)。かのウラディミール・ホロヴィッツが絶賛したピアノであり、江口にとっては「人生を変えたピアノ」だという。「ちょうど第1回目のコンサートの前年(2003年)に、このピアノをニューヨークのカーネギーホールに持ち込んでレコーディングしてきたところでした。とにかく一筋縄ではいかないピアノで……あまりにも音の出方が違うので、はじめて触ったときはどうしたらよいのかと頭を抱えましたね。現代のピアノのように均一化された品質で、鍵盤の上から下まで滑らかに音がつながるような楽器ではなく、1台1台に異なる性格があって、弾き手がピアノを選ぶのと同様に、ピアノも弾き手を選ぶような、相性が大切な楽器です。ハンマーが今のピアノより少し小さく、鍵盤も浅めに調整されることが多い。レコーディングのときは、ホロヴィッツの調律を担当していたフランツ・モア氏が調整してくださったのですが、上の音域、真ん中の音域、下の音域で、それぞれ完全に音色が違うんです。高音はキラキラ煌めき、低音はすごいパワーでうねり、真ん中は引っ込んでいるという、かなり独特なバランスでした」このピアノに出会ったことで、楽器と作品の成り立ちについても考えるようになったと江口は続ける。「つまり、上の音域でメロディを弾きながら、下の音