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2024年度主催公演年間ラインナップテーマ別に注目公演をチェックピアニスト多士済々それぞれの「今」を聴く浜離宮朝日ホールは、多くのピアノ・ファンにとっておなじみのホールだろう。ステージと客席との間に距離を感じさせない空間は、ピアニストが紡ぎ出す音をそのまま聴き手へと届けてくれる。2024年度も新進気鋭の若手から世界的名手まで、注目のピアニストによるリサイタルが予定されている。ジョージア出身のマリアム・バタシヴィリ(P10)は、2014年にユトレヒトで開催されたフランツ・リスト国際コンクールの覇者。2019年に初来日し、新日本フィルとの共演で好評を博したが、5月の公演が東京での初リサイタルとなる。得意のリストやショパンに加え、モーツァルトやシューベルトもプログラムされており、バタシヴィリの内奥に迫る一夜となりそうだ。6月には、田部京子(P11)の新たなリサイタル・シリーズ『SHINKA<進化×深化×新化>』がスタートする。20年以上にわたり浜離宮朝日ホールでロマン派の作曲家を軸とするリサイタル・シリーズを続けてきた田部のさらなる進化に耳を傾けたい。©AttilaKlebマリアム・バタシヴィリ©MarieStaggatニコライ・ホジャイノフ2010年のショパン国際ピアノコンクールで最年少ファイナリストとなり脚光を浴びたニコライ・ホジャイノフも30歳を越え、唯一無二の個性とスケールの大きな演奏で世界の聴衆を魅了し続けている。ショパン、ラヴェル、ムソルグスキーのほか、ホジャイノフの自作曲も日本初演される7月のリサイタルは、そんなホジャイノフの「今」を知る絶好の機会だ。また、ショパン国際ピアノコンクール関連では、8月に登場するエヴァ・ゲヴォルギヤンも聴き逃せない。2021年の同コンクールで最年少ファイナリストとして、17歳(当時)とは思えない円熟した演奏で世界を驚かせたゲヴォルギヤン。2023年9月に浜離宮朝日ホールで開催された日本デビュー・リサイタルはオール・ショパン・プログラムだったが、今回はショパンの「24の前奏曲」をメインに据えつつ、ベートーヴェン、ブラームス、ラヴェルも入ったプログラムで、さらなる成長を聴かせてくれることだろう。さらに、12月には2015年のショパン国際ピアノコンクールにおいて、史上最年少の16歳(当時)で第5位に入賞したイーケ・トニー・ヤンが登場する。中国の重慶市に生まれ、両親とともにカナダへ移住し、ダン・タイ・ソンに師事。未来の大器と注目される才能である。2022年に浜離宮朝日ホールで2夜にわたるリサイタルを行なったアレクサンダー・コブリンによる、11月のリサイタルにも注目したい。モスクワ生まれのコブリンは、ロシアがウクライナに侵攻した2年前に「今回の日本での演奏を、ウクライナとこの国の人々に捧げます」と語った。世界各地での戦火がさらに広がった今、コブリンは何を思い、何を奏でるのか。エヴァ・ゲヴォルギヤンイーケ・トニー・ヤン4©AlyonaVogelmannアレクサンダー・コブリン