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名手の至芸を間近にスペシャルなひととき日頃は規模の大きなホールでしか聴けないようなビッグ・ネームを、客席数552席の浜離宮朝日ホールで聴く贅沢な公演も予定されている。たとえば、9月のエレーヌ・グリモーのピアノ・リサイタル。2018年に来日が中止となって以来、ひさしぶりの日本での演奏となるだけに期待は大きい。同じく9月に登場するベルリン・バロック・ゾリステンもスペシャルな公演となるに違いない。1995年にベルリン・フィルの首席奏者たちによって創設され、メンバーそれぞれが優れたソリストでもあるアンサンブル。モダン楽器を使用しつつ、作品が作曲された当時の演奏様式を取り入れ、17〜18世紀の音楽にアプローチする彼らのヴィルトゥオジティを間近に聴くことができる貴重な機会だ。なお、この公演には2015年のパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールおよび2022年のシベリウス国際ヴァイオリンコンクールで優勝した韓国出身のヴァイオリニスト、ヤン・インモがヴィヴァルディ「四季」のソリストとして出演することが決定している。ベルリン・フィルのメンバーを中心に構成されたフィルハーモニー・オーボエ・カルテットに、佐渡裕がナレーターとして友情出演する12月の公演も興味深い。弦楽トリオとオーボエというユニークな組み合わせのカルテットは、現代の作曲家に新作を委嘱したり、演劇や文学と音楽を結びつけるなど、クラシック・シーンに新たな風を吹き込んでいる。室内楽といえば、2023年に好評を博した室内楽フェスティバルAGIOが、今年も12月に3日間にわたって開催される(計6公演)。「室内楽をもっと身近に」というコンセプトのもと、宮田大と横溝耕一の呼びかけにより、日本のクラシック界を牽引するアーティストが集ってスタートしたフェスティバル。今回も三浦文彰、郷古廉、木嶋真優、鈴木康浩、辻本玲、沼沢淑音ら豪華な面々が出演予定。若手の躍進のいっぽうで、2022年に演奏活動60周年を迎えたレジェンド、前橋汀子のステージも。2025年2月にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会が開催される。ベルリン・バロック・ゾリステン©NedaNavaeeヤン・インモフィルハーモニー・オーボエ・カルテットwith佐渡裕©K.Miura室内楽フェスティバルAGIO濃密な90分浜離宮ランチタイムコンサート2024年1月で20周年を迎えた浜離宮朝日ホールの名物シリーズ『浜離宮ランチタイムコンサート』にも、若手からベテランまでヴァラエティ豊かなアーティストが集う。国際コンクールで受賞を重ね、イギリスを拠点に活動するクラリネット奏者の橋本杏奈(6月/P11)、東京音楽コンクール弦楽部門第1位、日本音楽コンクールバイオリン部門第1位を受賞し、現在はジャニーヌ・ヤンセンに師事しているヴァイオリニストの荒井里桜(7月)、ジュリアード音楽院で学び、ウィーン・フィル、N響など国内外の名門オーケストラと共演を重ねるとともに、坂本龍一の指名により演奏するなど多彩なレパートリーを持つ中野翔太(8月)など、国際的に活躍するアーティストの充実のときを聴くことができる。また、10月には親子ともにバリトン歌手の黒田博と黒田祐貴によるデュオ・リサイタルが予定されており、楽しみだ。5©TairaTairadate中野翔太黒田博黒田祐貴