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伝統と革新、そして俊英との幸せなる邂逅ベルリン・バロック・ゾリステンwithヤン・インモ「卓越したモダン楽器の名手たちとの共演が、可能になるからです」。ベルリン・フィルの首席級の奏者を核として、1995年に創設されたベルリン・バロック・ゾリステン(以下、BBS)。ピリオド奏法を追究しつつ、あえてモダン楽器を使うメリットを問いかけると、かつてのベルリン・フィル第1コンサートマスターで、BBSの初代音楽監督を務めたライナー・クスマウルは、この点を特に強調していた。2015年にはパガニーニ国際、2年前にシベリウス国際と難関コンクールを次々に制してきた韓国のヴァイオリニスト、ヤン・インモとの“邂逅”は、まさにこの言葉を具現化するものだろう。11歳にして母国でリサイタル・デビューを果たし、アメリカやドイツで学び、数々の登竜門での実績や、各国の一線オーケストラとの共演を重ねて来た俊英。完璧な技巧と凛とした美音、しなやかな音楽性で、今や世界中の聴衆を魅了する。かたや、結成から30年近くを経て、BBSのプレイは、いっそう洗練性の度合いを深めている。モダン楽器ならではの剛性を巧く利用しながらも、決して重くならぬどころか、音楽の流れの良さや重音の処理など、ピリオド楽器に匹敵する軽やかさを実現。2018年からは古楽界の巨匠ラインハルト・ゲーベルを芸術監督に迎えて、ますますスリリングな“凄演”を披露し、現代におけるバロック演奏の理想像を現出している。そんな両者の共演の軸となるのは、バロックを代表する佳品で、標題音楽の先駆け的存在とも言うべき、ヴィヴァルディ「四季」と、ヴィヴァルディの作品から多くを学んだ大バッハによる、イタリア的な陽光に溢れた「協奏曲ホ長調」。さらにBBSは、バッハの対位法芸術の金字塔「音楽の捧げもの」から「6声のリチェルカーレ」や、次男カール・フィリップ・エマヌエルと五男ヨハン・クリストフ・フリードリヒによる「シンフォニア」も披露さ4©NedaNavaeeヤン・インモれる。そう言えば、彼らは近年、バッハ・ファミリーの作品の録音に体系的に取り組んでいる。“王道”から“隠れた佳品”まで、まさにバロックの粋が味わえるのみならず、ひとつの音楽的な波が、国籍や世代を超えて、どう受け継がれていったか、大バッハを核に暗示させてゆくプログラム。そして、ベルリン・フィルという伝統に裏打ちされつつも、常に新たな風を音楽界に吹かせてきたBBSと、次代を切り拓いてゆく俊英との幸せなる邂逅。必ずや、鮮烈な感動をもたらすステージとなろう。文/寺西肇(音楽ジャーナリスト)9/27(金)19:00¥15,000ヴァイオリン:ヤン・インモベルリン・バロック・ゾリステン予定メンバー[ヴァイオリン]ヴィリー・ツィンマーマン、町田琴和、ドリアン・チョージ、アルヴァーロ・ペラ、ライマー・オルロフスキー、アンジェロ・デ・レオ、エヴァ・ラブチェフスカ[ヴィオラ]ヴァルター・キュスナー、ユリア・ガルテマン[チェロ]オイヴィント・ギムセ[コントラバス]ウルリッヒ・ヴォルフ[チェンバロ]ラファエル・アルパーマンJ.C.F.バッハ:弦楽のためのシンフォニアニ短調J.S.バッハ:「音楽の捧げもの」BWV1079より「6声のリチェルカーレ」C.P.E.バッハ:弦楽のためのシンフォニアヘ長調J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042(ソロ:ヤン・インモ)ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」(ソロ:ヤン・インモ)