浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


>> P.3

「実は、この夏の終わりにマヨルカへ行く予定で、そこで何かインスパイアされるかもしれません」ベートーヴェン、ブラームス、ラヴェル初めて取り組む作品も多数ベートーヴェンからは第27番のピアノ・ソナタをとりあげる。「昔からいろいろな演奏を聴いていますが、もっとも感銘を受けたのは、私の師であるナタリア・トゥルーリ先生がモスクワ音楽院で演奏したときでした。ベートーヴェンのピアノ・ソナタは第1番から第11番までしか弾いたことがなく、後期に近い作品を演奏するのは初めてです。第27番は和音が最初に打ち鳴らされ、リサイタルの開始を告げるような、オープニングにふさわしい曲だと思います。ふたつの楽章からなり、普通のソナタとは少し違います。とくに、第2楽章の静かに消えていくように終わっていくところが好きです」このピアノ・ソナタは、ベートーヴェンの耳が聞こえなくなった時期の創作である。「天才だと思います。聞こえていないにもかかわらず、あれだけの作品を!とくに後期にあのような創作ができるなんて、ベートーヴェンは天才以外の何者でもないでしょう。そのような中で、次々と新しいものを試しながら、逆に先を行き過ぎていたから受け入れられなかったのは、よくわかります。時代を先取りしていて、なんと素晴らしいのだろうと思います」ブラームスの「4つの小品」作品119も、作曲家の後期の創作。それぞれ個性がまったく異なる4曲である。「彼の最後のピアノ作品です。私にとっては、本格的に取り組む初めてのブラームス作品です。4曲をまとめて演奏するのはとても難しいですね。いろいろな物語を想像し、その背景にある物語で4曲を繋いでいくと、ひとつにまとまるのではないかと思います」この作品集はクララ・シューマンとの結びつきがある。「とくに第1番ですね。とてもロマンティックで、その背景にある興味深い物語は想像しやすいですし、最後の曲はロマンティックを超えた喜びに満ちています。けれど、よく聴くと、最初のインテルメッツォがどこかに流れているようなイメージもあります」ラヴェルの「ラ・ヴァルス」も初めて勉強したという。ゲヴォルギヤンは、切れ味鋭いタッチと豊かな音色の持ち主。ラヴェル作品は彼女に合っていると思われる。「今年の2月中旬に、初めて公の場で演奏しました。最初に聴いたのはオーケストラ版で、そのときから大好きです。この作品には、ピアノ版にした際の音の取捨選択もあると思いますし、同時にピアノ版ならではの即興性も加味されています」この作品は、バレエを念頭に書き上げられた。実は、彼女はバレエを本格的に習っていた時期もある。「2歳から3年間、本格的なバレエ学校に通っていました。でもヴィオラ奏者の母の演奏を毎日聴くうちに、音楽をやりたくなり、『バレエはやりたくない、楽器をやりたい』と言ったら、母はヴァイオリンを与えてくれました。ところが、夢中になりすぎて壊してしまい、母から『あなたにはヴァイオリンは無理!』と言われてしまいました。そして、『頑丈だから』とピアノを与えられたのです(笑)。バレエは好きですね。リズム感を養うにはよかったと思います」読者のみなさまにメッセージをいただいた。「再び来日できることを嬉しく思います。2度目のコンサートになりますが、昨年来てくださった方も初めての方も、ぜひ会場でお会いしたいです」取材・文/道下京子(音楽評論)エヴァ・ゲヴォルギヤンピアノ・リサイタル8/30(金)19:00一般¥5,000U30¥2,000会場:浜離宮朝日ホール(東京都中央区築地5-3-2朝日新聞東京本社・新館2階)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番ブラームス:4つの小品Op.119ラヴェル:ラ・ヴァルスショパン:24の前奏曲Op.28ご予約:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990(日・祝除く10:00〜18:00)★関西デビューエヴァ・ゲヴォルギヤンピアノ・リサイタル9/7(土)14:00¥4,000会場:神戸朝日ホール(兵庫県神戸市中央区浪花町59)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番ブラームス:4つの小品Op.119ラヴェル:ラ・ヴァルスショパン:24の前奏曲Op.28ご予約:フェスティバルホールチケットセンター06-6231-2221(10:00〜18:00)3


<< | < | > | >>