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©YoshinobuFukaya©T.Tairadate©SEGI©ChiaraVilla浜離宮ベルカント・シリーズ第2弾山下裕賀&小堀勇介&池内響with矢野雄太~Baccanale!!~ロッシーニの2大人気作の名場面を日本が誇る名歌手たちの声の技でロッシーニといえば、一般的に美食家のイメージが強いのだろう。しかし、彼の本領は「勉強家」。音楽院の図書館で自習中の10代半ば、全く知らない作曲家――「Mozart」なのに!――の楽譜を目にして虜になり、それから毎日読み漁り、音の栄養にしたというのだから。その甲斐あってオペラ界の覇者となったロッシーニだが、彼の強みは「笑いと涙」を上品に描けたことにある。喜劇の「セビーリャの理髪師」はあのベートーヴェンを嫉妬させ、序曲が人気の「ウィリアム・テル」では、スイスの英雄の気高い歌で強面ワーグナーの心も揺さぶったのだ。さて、このほど開催の「Baccanale!!どんちゃん騒ぎ)」は、ロッシーニの2大人気作の名場面を1日に詰め込むという野心的な企画。膨大な数の音符をひと息で、猛スピードで歌い上げる」ことで、庶民の申し子理髪師のパワーも、恋に燃える王子の熱い心も表現するのがロッシーニ流である。その難しさは、スポーツにたとえるなら「スケートで3回転ジャンプを連続10回!」にも等しいもの。限られた名歌手だけが到達できる境地である。それでは出演者をご紹介。まず、ガタイが良く歌いぶりも華々しいバリトン池内響なら、理髪師フィガロの人間力を圧倒的な声量で表現するはず。登場のアリア「私は街の何でも屋」の爆発的な勢いをお楽しみに(ピアノの矢野雄太の全力投球ぶりにもご注目を)。続いてのテノール小堀勇介は、超高音を切れ味鋭く輝かせる名手なので、「理髪師」の青年伯爵の心意気を大アリア「もう逆らうのをやめよ」で毅然と歌い上げ、「ラ・チェネレントラ(シンデレラ)」の王子の優しさも、二重唱「何か分からぬ甘美なものが」で潤い十分に表現することだろう。そして、メゾソプラノ山下裕賀の美声と「奥ゆかしさ」もお聴き逃しなく!歌の知性と声の運動神経が海外でも評価された彼女は、「難しいフレーズを誰よりもスムーズに、かつ、誰よりも控え目に歌い上げる」稀有の実力者。だからこそ、先述の二重唱ではチェネレントラ(アンジェリーナ)そのものの初々しさで客席をすんなり掴み、王子と結ばれるフィナーレ「哀しみの涙から生まれて」も、圧倒的な声の技を通じて、本物の幸せ」を皆さまと分かち合うに違いない。文/岸純信(オペラ研究家)山下裕賀(メゾソプラノ)&小堀勇介(テノール)&池内響(バリトン)with矢野雄太(ピアノ)~Baccanale!!~4/6(日)15:00一般¥5,000U30¥2,000【第1部】ロッシーニ:歌劇「セビーリャの理髪師」より私は街の何でも屋/私の名前を知りたいのなら/金貨を見れば知恵が湧く/今の歌声は/それじゃ、私なのね!/思いがけないこの衝撃に/もう逆らうのをやめよ【第2部】ロッシーニ:歌劇「ラ・チェネレントラ」よりむかしむかしある王様が/何か分からぬ甘美なものが/静かに!声をひそめて!/あの美しい面影は/必ず彼女を見つけ出すと誓う/むかしむかしある王様が/テンポラーレ-嵐-/哀しみの涙から生まれて9