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©DariuszKuleszaショパン・コンクールと言えば、イ・ヒョクとともに2021年のファイナルで圧倒的な存在感を放った異才エヴァ・ゲヴォルギヤンも、7月にこのホールで3度目のリサイタルを行なう。彼女も、ショパンには特別な想いを抱いている。前半はショパン、そして後半はシューマンとラフマニノフによる作品で構成され、湧き上がるロマンティシズムを期待できるプログラムである。世界トップ・レヴェルのふたりの若手ピアニストの“いま”を、ぜひ聴いていただきたい。文/道下京子(音楽評論家)エヴァ・ゲヴォルギヤン©松尾淳一郎イ・ヒョクピアノ・リサイタル7/4(金)19:00一般¥5,000U30¥2,000ショパン:夜想曲第17番、ワルツ第2番「華麗なる円舞曲」、幻想曲スケルツォ第2番、ポロネーズ第5番マズルカ第26~29番、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」ポロネーズ第7番「幻想」、ピアノ・ソナタ第3番エヴァ・ゲヴォルギヤンピアノ・リサイタル7/31(木)19:00一般¥5,000U30¥2,000ショパン:幻想曲、ワルツ第3番・第7番、練習曲集Op.10よりシューマン:謝肉祭ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」Op.39よりイ・ヒョクピアノ・リサイタルショパン特有の淡い詩情音の色彩の陰影近年、韓国出身の若いピアニストたちの活躍が目覚ましい。イ・ヒョクもそのひとりである。2021年のショパン国際ピアノコンクールのファイナリストで、翌年のロン・ティボー国際音楽コンクールで亀井聖矢と優勝を分け合い、日本でもピアノ・ファンの間では知られた存在である。チョ・ソンジンやイム・ユンチャンと同じように、10代半ばからハイ・レヴェルの国際コンクールで優勝するなど、将来を嘱望されているピアニストである。4年前に参加したショパン・コンクールでは、7名の韓国人コンテスタントのなかで、イ・ヒョクは唯一ファイナルまで進出した。その時の彼のショパンは、ほとばしる情熱とともに、繊細さが際立った演奏であった。当時の彼は21歳であったが、ピアノ協奏曲第2番や「夜想曲」作品48-1などに見られるこの作曲家特有の淡い詩情を見事に醸し出し、音の色彩の陰影を美しく表わした。何よりも、ルバートの息遣いの細やかさ!叙情性に溺れる若い演奏が多いなか、イ・ヒョクはクールなまなざしで作品を見つめ、奇を衒わない解釈を通してリアルなショパン像を描き出していた。いま、俊英ぞろいの韓国人ピアニストのなかでも、最も注目されるひとりに数えられるイ・ヒョクが、7月に来日し、日本屈指の響きを誇る浜離宮朝日ホールでオール・ショパン・プログラムに挑む。プログラムには、前回のワルシャワで演奏された「幻想曲」やピアノ・ソナタ第3番、そして、今年10月に開催されるショパン・コンクールのファイナルにおける課題曲として挙げられたことで話題となった「幻想ポロネーズ」も披露される。しかも、このプログラムは休憩2回をはさんだ気合の3部構成!彼の並々ならぬショパンへの熱い愛情を感じずにはいられない。4