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©松尾淳一郎黒田祐貴黒田博バリトン・デュオリサイタル2026とびきりの二枚目が似合う親子はコミカルな役においてさらに威力を発揮!あの親子が浜離宮朝日ホールに帰ってくる!日本のオペラ界で長年、第一線で活躍しているバリトンの黒田博が、彼の息子で新進気鋭のバリトンである黒田祐貴とのデュオリサイタルを開催するのだ。二人は昨年10月に同ホールで初共演のリサイタルを開いた。筆者は幸せなことにその場に居合わせ、素晴らしい歌と演奏を堪能しつつ、抱腹絶倒の掛け合いに涙を流して笑ってしまった。彼らのパワーアップしたデュオリサイタル第二弾、ぜひ多くの人に聴いていただきたい。昨年のリサイタルは前半が日本歌曲、後半がオペラ・アリアで構成されていた。その基本的な枠組みは今回も変わらないようだ。黒田親子のコンサートには大きな特徴が二つある。一つめは日本歌曲の中でも、子どものために書かれた童謡が数多く取りあげられていること。昨年の例をあげると、中田喜直「たあんきぽーんき」、團伊玖磨「やぎさんゆうびん」、大中恩「いぬのおまわりさん」「おなかのへるうた」「サッちゃん」などが滋味深いバリトンで歌われ、これが実に良かった。もう一つの特徴は、抜群の演技力を活かした演出だ。タイプは多少違えど、黒田親子は二人ともとびきりの二枚目が似合うオペラ歌手だ。だが彼らの演技力は、コミカルな役においてさらに威力を発揮する。童謡の多くは二重唱で歌われたが、相手が歌っている時の動物の鳴き真似などが上手すぎた。歌が一流だからこそ、このような遊びが楽しいのだ。後半のオペラ・アリアや重唱でもその力は発揮された。最初に歌われたのはモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」の二重唱「馬鹿め、いい加減にしろ」だったが、オペラの衣裳を着ていなくても、そこにドン・ジョヴァンニとレポレッロの姿が出現する。その後ではもちろん、各自が得意のアリアもたっぷり歌ってくれた。来年1月のリサイタルの演奏曲目は、日本歌曲、昭和の子どもの歌、そしてその後にはオペラ・アリアという構成。前回にはなかったリクエスト・コーナーを設けるそうなので、事前にチェックしてほしい。ピアノは今回も大貫瑞季。豊かな響きと音楽的な充実で、彼らの歌を自由に羽ばたかせてくれるだろう。文/井内美香(音楽ライター)黒田博&黒田祐貴バリトン・デュオリサイタル20262026.1/30(金)19:00一般¥5,000U30¥2,0009/27(土)発売共演:大貫瑞季(ピアノ)團伊玖磨:花の街山田耕筰:からたちの花、鐘が鳴ります中田喜直:めだかのがっこう、大きなたいこモーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」より「男どもよ、ちょっと目を見開け」ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より「夕星の歌」コルンゴルト:歌劇「死の都」より「わが憧れ、わが幻想」ほか9